連載Vol.1 アリセプト開発者が語る、アルツハイマー根本治療薬の決意 杉本八郎 氏(薬学博士)

連載Vol.1 アリセプト開発者が語る、アルツハイマー根本治療薬の決意 杉本八郎 氏(薬学博士)

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サプリメントで体をコンディショニング

久保 明 氏(東海大学医学部客員教授、医学博士)

サプリメントで体をコンディショニング

池田アイコン:
本日は、臨床医として、教育者として、また研究者として幅広い分野でご活躍の久保明先生にお話を伺います。
セルフメディケーションという言葉が一般に浸透し、調剤薬局でもサプリメントや様々な機能性食品を扱うようになりました。おかげさまで弊社の『ドクターズチョコレート』も調剤薬局でお取り扱いいただき、好評を得ております。
ただ、薬剤師は薬のプロフェッショナルではあってもサプリメントや機能性食品に関する教育を受けてきているわけではないので、戸惑っていらっしゃる方もいるのではと思います。
久保アイコン
サプリメントアドバイザーの認定も行っている日本臨床栄養協会の会員数は現在5000人ぐらいいらっしゃるのですが、会員で一番増えている層は薬剤師です。つまりそれだけ栄養に興味を持っている薬剤師が増えているということですね。やはり患者さんから栄養について質問を受ける場面が増えてきているのでしょう。
患者さんは最初からサプリメントを買いに来るのではなく、自分の栄養状態や体調を不安に思って訪ねてくる…なぜなら、病院の敷居は高いから。それで薬剤師に相談するケースが増えているのだと思います。薬局は、患者さんにとって非常に大切な場所になっているはずです。
池田アイコン
先生はサプリメントにも精通していらして、著書もおありです。サプリメントに興味をお持ちになったきっかけは?
久保アイコン
私は子どもの頃から喘息の疾患を持っているのですが、当時の医師は「喘息は発作を薬で抑えればいい」という考え方でした。しかし、患者としての私は「なるべく薬を減らして、できるかぎり薬に依存したくない」という希望がありました。もちろん薬がダメというわけではなく、薬も一緒に使いながら、もっと自分の力、治癒力みたいなものを活性化できないかと考えていました。
池田アイコン
そう考えたときに、サプリメントの存在があったのですね。
久保アイコン
はい。もちろん、栄養の基本はバランスの取れた食事です。これは大前提。それから身体活動やマインドフルネスもとても大切です。ただ、栄養というものを考えたとき、サプリメントは必要不可欠ではないにせよ、重要な要素になると思っています。
明らかな疾病対策としてではなく、自分の体のコンディションを整えるという意味で、サプリメントのポジションがあるのではないでしょうか。
しかし、誰もが同じものを飲めばいいとか、摂取量が多ければいいというわけではありません。皆さん一人ひとり、活性酸素による障害のレベルも違うし、血中のビタミンCのレベルも違いますから、必要な栄養素も、望ましい摂取量も異なります。患者さんがご自身のデータを把握してサプリメントを選ぶことが必要なのです。
池田アイコン
何か一つ健康食品や飲料が流行すると、みんなそればかり食べたり飲んだり…。それに飽きるとまた別なものが騒がれるという風潮があるような気がします。
久保アイコン
魚脂がいいとか、オリーブオイルがいいとかね。でも本来は、患者さんが自分の健康状態の指標を把握して、サプリメントや機能性食品でその不足分を補うといった方向に意識を変えていってほしいと思います。薬剤師にはぜひ、患者さんとそのような対話をしてほしいですね。
池田アイコン
薬剤師に相談しようという方は、ご自身の健康状態を把握したいとお考えの人が多いのではないでしょうか。
久保アイコン
例えば血糖値の測定にしても、簡単に血糖測定ができる機器などがテレビで取り上げられています。皮下に測定器をつけておいて、センサーを持ってくればそれだけで自分の血糖値を測ることができます。また、時計式のウェアラブル端末を使えば、睡眠の状態や血圧といった自分の健康情報を気軽に把握できる時代になってきました。これらが一つの突破口となって、薬剤師と一般の人たちとの会話の内容が、より実のあるものになるのではないでしょうか。
池田アイコン
同じ栄養成分でもいろいろなメーカーからサプリメントが発売されていますが、選ぶポイントなどはありますか?
久保アイコン
最も重視するのは「お客様相談室」の連絡先が明記されているかどうかですね。大手ブランドだから、有名メーカーだからいいとは必ずしも思いません。小さなメーカーであっても、まじめにやっているところはたくさんありますよ。
含有量については、文字が小さくても表示をきちんと確認するしかありません。どれぐらいの量が入っていればいいかは患者さんご自身の健康状態や求めるものによって変わってくるので、薬剤師に知識があれば的確なアドバイスができるでしょう。
池田アイコン
患者さんとの会話の中で、病院に行くようお話ししなければならないケースもあるかもしれませんし、「野菜から食べましょう」とアドバイスするとか、食後血糖値を上げないようなお茶を勧めるとか、一人ひとりへの対応が求められるということですね。
久保アイコン
はい、そうです。

VOL.2 へ続く >>

久保 明(くぼ・あきら)
プロフィール
1979年、慶應義塾大学医学部卒業。医学博士。米国ワシントン州立大学医学部に留学後も、一貫して抗加齢医学・生活習慣病の研究と臨床に取り組む。日本臨床栄養協会理事、厚生労働省薬事・食品衛生審議会専門委員、日本抗加齢医学会評議員、東海大学医学部教授等、歴任。現在、常葉大学健康科学部長・教授、東海大学医学部客員教授。医療法人財団百葉の会 銀座医院 院長補佐・抗加齢センター長。

「調剤薬局ジャーナル」2019年1月号より転載

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