セルフメディケーション シリーズ 対談:調剤薬局における薬剤師の未来を考える

セルフメディケーション シリーズ 対談:調剤薬局における薬剤師の未来を考える

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連載Vol.2 AI化に向けた取り組みと在宅医療

山田 友香 氏(阪神調剤薬局 副社長、阪神調剤ホールディング株式会社 常務取締役兼人事本部長)

連載Vol.2 AI化に向けた取り組みと在宅医療

池田
将来的に調剤のオートメーション化など、調剤薬局に求められる役割が変わっていくことが予想されますが、それについてはどうお考えですか。
山田
自動化の方針は各都道府県により異なります。でも、いずれは全国的にAIやシステム化が促進され、薬局の在り方も変わっていくでしょう。私は、だからこそ機械では対応できないこと、最終的に人間である薬剤師にしかできないことに特化するしかないと思うのです。その意味で、"外に出ていく薬剤師"の必要性を感じています。
山田友香先生
池田
外に出ていく…患者さんの元へ駆けつける薬剤師さんは、御社がパイオニアですよね。在宅医療への取り組みについてお聞きしたいのですが。
山田
最初は、薬剤師たちから大きな抵抗がありました。患者様のご自宅や施設に伺うため、プライベートに踏み込むわけで、大小様々な問題にぶつかって戸惑うことも多かったと思います。例えば、ご自宅に伺った時にモノがなくなったとクレームがあったらどう対応するのか、車でしか伺えない場所に駐車場がない時はどうするのか…など、山ほど想定しなければいけないので。
池田
それはさぞ薬剤師さんも不安に感じたでしょうね。
山田
はい。でもやってみないことには始まりませんから、まず関西エリアに在宅専門薬局を2店舗つくり、私の直属の薬剤師を配置しました。この店舗に配属された薬剤師は、社内の勉強会で常にレポートを提出しました。このようにして1~2年は根気よく、他の薬剤師たちの不安を取り除きつつ、徐々にハードルを下げていきました。おかげさまで、いざ全店舗に導入したところ、想定したような問題はほとんど起こりませんでした。
池田
すばらしいです!
山田
現在の方針は、たとえ大学病院前の門前薬局であったとしても、在宅を最低1件は取り扱うように、というものです。ただ、この手法が正しいかどうかは、私もまだわかりません。
池田
在宅訪問を実施する前と後で、薬剤師の皆さんに変化はありましたか?
山田
はい。よく話に聞くのは"看取り"の立ち合いです。病院ではなく、ご自宅や施設で亡くなる場面に立ち合うという経験は、薬剤師たちの意識を変えました。私も看取り体験の話を聞いた時、すごく感動しました。
池田
薬剤師と患者さんの距離が近いからこそのお話ですね。在宅をはじめ、地域の健康フェアなど、御社はそこに住んでいる人たちに寄り添う活動を活発になさっている印象があります。一朝一夕ではなし得ない、互いの信頼が築けているんでしょうね。
山田
ありがとうございます。健康フェアなどは薬剤師が自発的に行っています。当社にはマスコット・キャラクター『はんにゃん・はにゃみ』がおりまして、着ぐるみを本社から貸し出しているのですが、彼らは出張に出ることが多く、ほとんど本社にはいないんですよ(笑)。また、社内報も作っています。1ヶ月に1回のペースで発行し、各薬局の取り組みを具体的に紹介しています。私が思うに、社内報は大きな役割を担っていて、フェアや展示開催者の慰労だったり、店舗への刺激だったり、モチベーションという観点からも有意義だと感じます。
山田
自分たちの活動が紙面に掲載されることで、やる気がアップしますものね。

VOL.3 へ続く >>

山田 友香(やまだ・ゆか)
プロフィール
武庫川女子大学を卒業後、阪神調剤薬局に入社。数店舗でスタッフとしての経験を積み、本社勤務となる。店舗を運営・管理する薬局管理部長、薬局人事を統括する薬局統括本部長を経て、副社長に就任。阪神調剤ホールディング株式会社常務取締役・人事本部長を兼任。

「調剤薬局ジャーナル」2019年5月号より転載

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