セルフメディケーション シリーズ 対談:調剤薬局における薬剤師の未来を考える

セルフメディケーション シリーズ 対談:調剤薬局における薬剤師の未来を考える

  • 1
  • 2
  • 3
  • 1
  • 2
  • 3

連載Vol.3 研修制度の充実で優秀な薬剤師を確保

山田 友香 氏(阪神調剤薬局 副社長、阪神調剤ホールディング株式会社 常務取締役兼人事本部長)

連載Vol.3 研修制度の充実で優秀な薬剤師を確保

池田
5年前ですか、学術大会を視察した際、御社の薬剤師の論文発表が多かったことや、ポスター掲示の内容が詳細で密度が濃かったことが印象に残っています。特に私の関心分野である糖尿病についての調査が多く、たいへん勉強になりました(※2)。研究熱心な薬剤師を育てるために、どのような工夫をなさっているのでしょう?
山田
当社が研修制度に目を向けたきっかけは採用の問題からでした。全国に店舗展開しているとはいえ、阪神調剤薬局は阪神エリアが中心です。そのため、もっと規模の大きなチェーンに人材獲得競争で負けてしまう時期がありました。薬剤師はもともと向学心が高く、就職の際も研修制度がどの程度充実しているかを選ぶ基準にします。従って、選ばれる勤務先になるために、研修制度の充実が不可欠でした。そこで一般的なマナー・接遇を始め、外部講師を招いたコミュニケーション講座など幅広い学びの場を設けるようにしました。
専門薬剤師の育成についても徹底してフォローします。隙間の時間で学ぶことができるWEB研修を導入し、単位取得がしやすくなりました。レジデントもすべて会社で経費を負担しています。 
池田
学びやすい環境整備に注力していらっしゃるのですね。2018年から御社で始まった『学術研究倫理審査委員会』について教えてください。
山田
『学術研究倫理審査委員会』は学会発表の手続きをフォローする社内機関として設置しました。当社では、日本薬局学会や社内学術大会での発表を奨励しています。学会発表は、薬剤師たちが情報を共有し、刺激を与え合う効果もあります。 
池田
まさしく「人財」になるということですね。人事のキーマンとして日頃から心がけていらっしゃることはありますか?
山田友香先生
山田
ささやかなことですが、話をよく聞くようにしています。薬剤師や管理栄養士、事務員に至るまで、日常的に患者様に接していること自体、私はすごいことだと思うのです。ですから従業員一人一人と向き合い、話に耳を傾けたい…。たとえその意見は違うと思っても、まず本人の言いたいことを存分に話してもらい、それを否定しないように心がけています。「あの時、もっとちゃんと聞いておけばよかった」と後悔するのは嫌ですから。
池田
なかなかできないことだと思います。社員お一人お一人と向き合おうとする姿勢には尊敬を覚えます。今日はお忙しい中、ありがとうございました。

(※2)2014年の学会発表で池田貴子氏が興味を持った阪神調剤薬局のレポートの一例は以下のとおり。
『糖尿病患者が薬剤師に求める支援とそれに対する薬剤師の意識調査』 
『血糖値と治療に対する意欲の関係』 
『糖尿病患者における食事・運動療法の関心と自己満足度調査』 
山田友香先生

<< VOL.1 へ戻る

山田 友香(やまだ・ゆか)
プロフィール
武庫川女子大学を卒業後、阪神調剤薬局に入社。数店舗でスタッフとしての経験を積み、本社勤務となる。店舗を運営・管理する薬局管理部長、薬局人事を統括する薬局統括本部長を経て、副社長に就任。阪神調剤ホールディング株式会社常務取締役・人事本部長を兼任。

「調剤薬局ジャーナル」2019年5月号より転載

【 TOPページ へ 】