- 池田
- 先生はご著書で「未病」についても書いていらっしゃいますが、未病も食生活が大きく関わっているのでしょうか?
- 斎藤
- 未病には、自覚症状はないが検査で異常が見られる西洋医学的未病と、自覚症状はあるが検査では異常が見られない東洋医学的未病という考え方があります。軽微であるがゆえに異常な状態に慣れてしまい、見過ごしてしまう。しかし、火の無いところに煙は立たない。そしてくすぶる火はやがて大火事に発展していきます。
未病こそ原因を究明し、根本的に解決することが大切です。たとえば、下痢症は体質だと思われがちですが、食物過敏症や腸内細菌異常が背景にあることが多々あります。食物過敏症の検査は、日本ではまだそれほど普及していないんですが、検査をするとだいたい8割くらいの人は異常が出ますからね。そして治療が可能です。
- 池田
- たしかに見た目は健康そうでも中身を調べたら…ということはありますね。
- 斎藤
- 未病に対するアクションをどう捉え、考えるかが大事です。特に体調は悪くないけれど、とりあえず健康そうだからやっておこうみたいな人が多い気がします。本来は、自分の体調がすぐれない原因は何なのか、こんな症状が出ている理由はなぜなのかという見立てがピタッと当たれば、劇的に改善します。栄養って薬のように効くんですよ。日本ではそんなふうにあまり考えられていませんが、きちんと見立てが合う、つまり、自分に合ったものを摂れていれば、ちゃんと効いて元気になるんですよ。タンパク質ひとつとっても、ガラッと変わってきます。
- 池田
- それはすごいですね! 未病はもうすでに病んでいるというお話は、先生が初めてです。
- 斎藤
- 自分は健康だ、未病だという人に限って、漫然とただ健康志向でやっているケースが多いように思います。先ほど「見立て」という言葉を使いましたが、自分の体の状態をよく知って、それに合ったものをきちんと摂れば貧血、頭痛、肩こり、冷えなども改善しますよ。
- 斎藤 糧三(さいとう・りょうぞう)
プロフィール - 医師。日本機能性医学研究所所長。1973年東京都生まれ。1998年日本医科大学を卒業後、産婦人科医に。その後、機能性医学をいち早く日本に紹介するべく日本機能性医学研究所を設立、日本で初めての認定医となる。現在、日本ファンクショナルダイエット協会副理事長、ナグモクリニック東京・アンチエイジング外来医長、サーモセルクリニック院長などを務める。栄養療法、アレルギーの根本治療、ケトジェニックダイエットの啓蒙、指導など、得意分野は多岐にわたり活動は幅広い。著書・監修本に『慢性病を根本から治す「機能性医学」の考え方』(光文社新書)、『糖質制限+肉食でケトン体回路を回し健康的に痩せる! ケトジェニックダイエット』(講談社)など多数。
「調剤薬局ジャーナル」2019年5月号より転載
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