セルフメディケーション シリーズ 対談:地域医療を支える薬局を目指して- 6.2020年、薬局は変わらざるを得ない

セルフメディケーション シリーズ 対談:地域医療を支える薬局を目指して- 6.2020年、薬局は変わらざるを得ない

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連載vol.6 2020年、薬局は変わらざるを得ない

狭間研至先生 (医師 / ファルメディコ株式会社代表取締役社長)

連載vol.6 2020年、薬局は変わらざるを得ない

池田
今までの薬局は、患者さんを待たせないで早く薬を出せばいいというところがありましたけど、そんな状況がずっと続くわけはないですものね。
狭間
当時はなかなか「3.0」の考えが理解されづらかったかもしれません。しかし今では「先生の言っていたとおりになりましたね」と、よく言われます。2020年度の診療報酬改定に向けて、これからいろいろな部分で、薬局は変わらざるを得ないところへきていると思います。
池田
少子高齢化社会で、セルフメディケーションがますます重要になってくると考えた時に、薬剤師さんの役割には大きな可能性がありますね。
狭間
僕は今、薬剤師の社会的地位や評価が不当に低いと思っています。環境や制度などいろいろな問題がありますが、薬剤師さん自身にも一因があると感じています。薬を出したあとのフォローをしようという話をした時に、責任を持つのが嫌だと、反対の声があがりました。でもやっぱり大切なのは、患者さんのことにどこまで責任を持つか、ということに尽きると思うんです。昔、僕の親が薬局をやっていた時は、例えば市場でお客さんに会ったら「あの薬はどうだった?」と聞いていました。そういうフォローが大事なんですよ。自分で薬を出して自分でお金をもらっているんだから、そこには責任が生じて当然です。
転職会社の人に話を聞くと、薬剤師の転職の条件として「今よりも近くて、楽で、時給が高いところ」という人が多いそうなんです。それで楽々と職に就けていた状況も影響しているんでしょう。資格を取って、高い時給で働いて、責任はないという立場で安心していたのが、いきなり患者さんを看ろと言われても戸惑うばかり……そういう感じなのかもしれません。
狭間研至先生
池田
一時期、派遣の薬剤師さんの時給が高騰していたという話を聞いたことがあります。
狭間
つらくて大変なこともあるけれど、責任を持つということが、薬剤師自身にとっても結果的にいいことにつながると思うんです。診療報酬や保険調剤は、普通のビジネスモデルと違い、自分たちで値段を決めることがありません。決まった仕組みの中で、長い間ほとんど変わらずに働いてきたから、業界自体が変わることに対して遠慮がちになっている面があると思います。でも、薬剤師が患者さんを看るようになっていかないと、機械やインターネットにとって代わられ、人間がやる意味がなくなってしまう。それに、薬の副作用や薬漬け医療の問題などを改善していくためにも、薬剤師の役割はとても重要です。
池田
そう思います。
狭間
この変化をみんなで乗り越えていかなければと、僕は思っているんです。

VOL.7 へ続く >>

狭間研至(はざま・けんじ)
プロフィール
ファルメディコ株式会社代表取締役社長、医師、医学博士。1969年大阪生まれ。1995年大阪大学医学部を卒業後、大阪大学医学部付属病院、大阪府立病院(現 大阪府立急性期・総合医療センター)、宝塚市立病院にて外科・呼吸器外科診療に従事。2000年大阪大学大学院入学、異種移植をテーマとした研究・臨床を行う。2004年より薬局経営に従事。現在は医師として診療を行いながら、一般社団法人日本在宅薬学会の理事長として薬剤師生涯教育や薬学教育に携わるなど、新しい医療環境の実現に向け幅広い活動を行う。著書に『薬剤師3.0 地域包括ケアを支える次世代型薬剤師』(薬事日報社)、『薬剤師のためのバイタルサイン』(南山堂)など多数。

「調剤薬局ジャーナル」2019年11月号より転載

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