喉のケアと家庭薬で国民の健康に寄与したい 龍角散 代表取締役 藤井 隆太

喉のケアと家庭薬で国民の健康に寄与したい 龍角散 代表取締役 藤井 隆太

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連載Vol.4.異文化の国で売上を伸ばす日本の家庭薬

龍角散 代表取締役 藤井 隆太

連載Vol.4.異文化の国で売上を伸ばす日本の家庭薬

池田
御社はいち早く海外に展開されました。その経緯を教えていただけますか?
藤井
台湾でのビジネスは、もう55年になります。立派な戦略があったわけではなく、先方の希望でした。香港や韓国、中国、アメリカも同様です。それだけ日本の家庭薬はポテンシャルが高いのです。私も八代目ですが、日本には幾世代に亘って世界に誇れる技術を継承している企業が多い。良いものは国を越えて評価されるということでしょう。
ただ、家庭薬は生活の一部なので、海外で売る場合は異文化との融合を図る必要があります。相手国の習慣や宗教を理解し、じっくり時間をかけて生活に密着する覚悟が求められます。
池田
相手国の内情を理解しつつ、どう担って一緒にやっていくかというスタイルが素晴らしいです。中国では「神薬」と呼ばれているとか。
藤井
インバウンドという言葉もなかった2010年にビザの発給要件緩和や日本政府のクールジャパン政策を機に、私が仲間の家庭薬メーカーに声をかけ、フリーペーパーに共同広告を載せたんです。それが中国で数十万部ほど配られ、以来どんどん日本に買いに来てくれるようになりました。これは完全に仕掛けた戦略でした。
やがて組織的バイヤーの数が増えたので、当社は2018年に越境ECをオープンしました。その売上が伸びると、今度は中国の医薬品大手「カジュンサンキュウ(華潤三九)」が当社に関心を持ちましてね。2019年8月に提携を発表し、中国で当社製品の販売を始めることにしました。
中国企業との交渉は、さんざん罵倒し合っても、終われば乾杯!乾杯!です。海外制作のCMも面白いですよ。台湾では、中華鍋を振る料理人が登場、鍋から飛び散る油を吸って喉を痛めたりするからだそうです。韓国では、黄砂PM2.5による大気汚染で咳込む人々が登場します。そして最後にジャーンと「龍角散」が映る。まさに異文化ですね。
池田
日本で長年愛されてきた龍角散の躍進が楽しみです。本日はどうもありがとうございました。
藤井隆太氏

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藤井 隆太(ふじい・りゅうた)
プロフィール
江戸時代にルーツを持つ株式会社龍角散の八代目。小林製薬で2年、三菱化成工業(現・三菱ケミカル)で8年勤務の後、病に伏した父親の頼みで40億円の負債にあえぐ家業を継ぐ。1995年から代表取締役社長。桐朋学園大学卒のフルート奏者でもあり、音楽家ならではの感性で、同社のオンリーワンである龍角散パウダーの強みを推進し、「のどの専門メーカー」として経営の立て直しに成功、老舗の暖簾を守った。商工会議所議員として、厚生労働省社会保障審議会医療保険部会の委員を7年連続で務める。音楽家としては、2020年7月にバルカン室内管弦楽団との競演を予定。その語りは軽快な江戸っ子調で、聞く者を惹きつける。

「調剤薬局ジャーナル」2020年5月号より転載

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