薄紙を一枚一枚重ねるように患者さんからの信頼を得る努力を! 帝京平成大学薬学部教授 井手口 直子

薄紙を一枚一枚重ねるように患者さんからの信頼を得る努力を! 帝京平成大学薬学部教授 井手口 直子

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連載Vol.3.患者を自分のペースに巻き込まない。無理に何か指導しなくてはと焦る必要もない。

帝京平成大学薬学部教授 井手口 直子

患者を自分のペースに巻き込まない。無理に何か指導しなくてはと焦る必要もない。

池田
たしかに忙しいオーラが出てしまっている薬剤師さんには、患者さんも「この人には相談できない、話せない」と感じてしまうでしょう。患者さんの信頼を得るには、具体的にどのようにアプローチすればよいとお考えですか?
井手口
基本は患者さんのペースに合わせることだと思います。忙しいからと言って、自分のペースに患者さんを巻き込まないこと。これが第一。次に、患者さんに何か一つ質問をして、その反応を確かめながら、また次の質問を投げかける。その際、その患者さんが興味を持ちそうなテーマを選ぶなどの工夫が必要です。患者さんの処方箋を見て、注意しておいたほうがいい副作用について、それとなく話題を振るとか、質問を工夫すること。たとえ患者さんからちゃんとした返事がなくても、諦めないことです。次の機会に、答えが返ってくるかもしれません。
井手口直子氏
池田
そういった会話の積み重ねが「薄紙を重ねるように」ということなんですね。一人一人に合った質問をしていれば、きっとどこかのタイミングで気持ちがつながる機会があると。
井手口
はい、そうです。患者さんとの会話では、無理に何か専門的な指導をしなくてはと焦る必要はありません。むしろ、患者さんの言葉に耳を傾けるほうが優先です。たとえば妙につっかかってきたり難題を言われたりした時は、「なぜ、そのようにお考えになったのですか?」と、患者さんの言葉の背景を掘り下げて聞く努力をすること。一つの言葉の裏には様々な気持ちが混ざっているものです。

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井手口 直子(いでぐち・なおこ)
プロフィール
帝京大学薬学部を卒業、薬剤師として勤務後、独立して株式会社新医療総合研究所を設立。日本大学専任講師、帝京平成大学薬学部准教授を経て、2013年より教授に就任。薬学博士、教育博士。日本ファーマシューティカルコミュニケーション学会常任理事、全国薬剤師・在宅療法支援連絡会副会長、日本地域薬局薬学会理事等を務める。ラジオNIKKEI『井手口直子のメディカルCafé』のパーソナリティとしても活躍中。最新刊『薬剤師になるには』(編著・ぺりかん社)のほか、著書多数。

「調剤薬局ジャーナル」2020年7月号より転載

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